日活ロマンポルノで活躍し、海外からも高い評価を受ける根岸吉太郎監督
日活ロマンポルノで活躍し、海外からも高い評価を受ける根岸吉太郎監督

2月19日、秋田県横手市十文字文化センターで行われた「第26回あきた十文字映画祭」内で、「東北芸術工科大学 映像学科」「日本映画大学」の学生たちによる卒業制作作品が上映、一般の観客が新たな才能に触れあった。

横手市を始めとした、スクリーンで映画を観る機会を失っている地域での「映画のある町づくり」を目指して1991年に発足した「あきた十文字映画祭」は、最新の邦画、新人監督、アジア圏映画の3本の柱で上映作品が選ばれている。今年の映画祭では東北芸術工科大学 映像学科の卒業制作作品に加え、日本映画大学の卒業制作作品も合わせた全6本が上映されることとなった。

会場の横手市十文字文化センター
会場の横手市十文字文化センター
東北芸術工科大学 映像学科と日本映画大学の学生がゲスト登壇
東北芸術工科大学 映像学科と日本映画大学の学生がゲスト登壇

この日は上映を前に、東北芸術工科大学学長の根岸吉太郎監督があいさつ。「東北芸術工科大学で学生に映画を作らせているんですが、ぜひ同じ東北ということで、発表する場を提供してほしいと映画祭に相談したところ、快く快諾していただけました」とその経緯を説明すると、「今年は日本映画大学という、(映画監督の)今村昌平さんが作った大学の卒業制作も上映してもらうことになりました。昨年の映画でも『怒り』の李相日君とか、『湯を沸かすほどの熱い愛』の中野量太君など、日本を代表する監督を輩出している立派な大学です」とコメント。

さらに「才能が巣立つのは長い時間がかかります」と続けた根岸監督は、「同時に口はばったいですが、観客が育つのも長い時間がかかります。この映画祭は26年目となりますが、皆さんの映画を観るリテラシーがすばらしい。昨日はこの会場で観客の皆さんの質問を拝聴していましたが、映画に対する高い知識と理解と愛情がヒシヒシと感じられました。そういう目で学生の映画を観ていただければ大変に幸せだと思います」と呼びかけ。そして最後に「彼らはまだ稚魚みたいなものなんで、川に放流してもらえる感じです。彼らが10年後、20年後に、映画を持ってここに帰ってくることを願っている次第です」と付け加えた。

根岸吉太郎監督は学生と観客に熱いメッセージを送った

そしてその後は東北芸術工科大学 映像学科の作品を上映。まずは先崎大朗監督のCGアニメ作品『星屑のおとしもの』。星屑の入った小瓶を背負った黄色い生命体「コビト」が間違って穴に落ちてしまい、見知らぬ世界でお気に入りの星屑を求め探検していくさまを描き出した作品だ。先崎監督は「セリフと音楽以外はほぼ自分一人で作りました。11分半くらいの作品なんですが、制作自体は4、5カ月くらいかかりました」と振り返った。

続いては黒田恵利監督の『CHIGAI』を上映。とある女性の元に突如現れた謎の生命体が、互いの違い、欠損を受け止めあいながら新しい命を育んでいくさまを描き出す。手描きで作りだしたアニメーションは、「(フレデリック・バックの名作)『木を植えた男』からは影響を受けています」と黒田監督は語る。

次には鈴木翔子監督の『at home』を上映。「22年間住んでいた自分の家に帰らなきゃいけない時の気持ちを描きました」と語る鈴木監督だったが、「意図的に音声を加工しました。逆回転にしたりすることで、胸に詰まった思いを表現しました」と言う通り、不思議な世界観を持つ作品となった。そして監督の来場はかなわなかったが、続いて松本樹監督の『HARD BOILED CITY YAMAGATA』も上映された。

東北芸術工科大学 映像学科の面々
『星屑のおとしもの』の先崎大朗監督
『CHIGAI』の黒田恵利監督
『at home』の鈴木翔子監督

続いて日本映画大学の卒業制作作品が上映されることに。まずは三宅辰典監督の『キャンパスの景色』。誰かの役に立ちたいと思い、介護士になった理沙が、四肢まひの障害を持つ裕太の心を開こうと努力するあまり一線を越えてしまう――というさまを描き出したドラマだ。「全編35ミリフィルムで作りました。2時間分のフィルムしかなかったので、それほどテイクを重ねられずに、撮り直しのきかない緊張感の中でやりました」と三宅監督は振り返る。

そして最後は原口大輝監督の『乙女よ、走れ』を上映。明るくて奔放な高校1年生の久美、親友の本子、そしてクラスメートでガリ勉君の俊也という三人の高校生たちの恋模様を軽やかに描き出した同作。「キャスティングにはけっこうこだわりました。人物に合う役者をひたすら探し続けました」と原口監督が振り返った通り、俳優たちの自然で生き生きした演技が見どころの作品となっている。

日本映画大学の面々
『キャンパスの景色』の三宅辰典監督
『乙女よ、走れ』の原口大輝監督

“学生映画”とは銘打っているが、ハイクオリティーな作品が集まった今年の上映会。この中から次世代の才能が飛び出すのか。注目したい。

【取材・文/壬生智裕】

2017年2月22日 配信