授賞式には、『葛城事件』で最優秀主演男優賞を獲得した三浦友和(写真中央右)らが出席
授賞式には、『葛城事件』で最優秀主演男優賞を獲得した三浦友和(写真中央右)らが出席

3月26日、群馬県高崎市の群馬音楽センターで行われた「第31回高崎映画祭」授賞式で、昨年11月11日に逝去したシンガー・ソングライターで女優のりりィさん(『リップヴァンウィンクルの花嫁』)に最優秀助演女優賞が授与された。式では、同作のメガホンをとった岩井俊二監督が故人を偲ぶメッセージを送るひと幕もあった。

1987年に始まった高崎映画祭も今年で31回目。「東京で上映されているのに、なかなか地方では観る機会のない作品を高崎で観たい」という思いから始まった上映会が、やがて市民ボランティアの手により映画祭という形に発展。今では高崎の春の風物詩として親しまれるようになった。さらに本映画祭では、2015年12月中旬から2016年12月中旬にかけて劇場公開された作品を対象に、高崎映画祭選定委員が選出した映画賞を発表。こちらも映画祭の楽しみのひとつとなっている。

今年の最優秀助演女優賞に選ばれたのは『リップヴァンウィンクルの花嫁』のりりィさん。同賞の選出理由としては、「我が子を顧みなかった母親を演じる。出番としては、Coccoが演じるAV女優・真白(ましろ)の亡骸を受け取るという終盤のシーンのみであるが、その存在感は圧倒的であった。自らの死期を意識し、頑なに仕事に没頭し、孤独に怯え、愛に飢えた真白の人となりが、りりィ(さん)演じる母親の出現で説得力を増す。その上で、間違いがあったとて、産み育て、娘を想う「母親」の愛が、画面を占拠することで物語は収斂を迎えるのだ。その慟哭と人間味あふれる人物像に誰もが胸を打たれた。日本映画界にとって無くてはならない名女優であった。謹んで哀悼と敬意を表する」とアナウンスされている。

岩井俊二監督からの手紙を代読する宮川朋之プロデューサー

この日は、故人に代わり、同作の宮川朋之プロデューサーが出席。「岩井監督が、どうしても別の執筆活動に入っていて来られないということで、メッセージを預かってきました」と切り出した宮川プロデューサーは、岩井監督の手紙を代読。「20年ほど前、俳優の豊川悦司さんが自ら監督したドラマがありました。彼がりりィさんがすばらしいと絶賛していたので、ドラマを拝見しました。そこで初めて観たりりィさんは独特の雰囲気で、すっかり魅了されました。それからずっとご一緒したいと思っていました」という出だしから始まったその手紙は、「それがようやく実現したのが、数年前。(岩井が企画・脚本を務めたテレビドラマ)『なぞの転校生』で王妃役を演じていただきました。そこでは王妃が亡くなるという長いシーンがあり、そこに最終回直前を費やし、全話を通じても印象に残る回になりました」とつづられていた。

そして今回、最優秀助演女優賞を獲得した『リップヴァンウィンクルの花嫁』については「個人的体験がありました」と続けられており、「あの時期、黒木(華)さんと綾野(剛)さんのスケジュールを合わせるのが難しく。2回もスケジュールが変更になり、りりィさんには大変なご迷惑をかけてしまいました。ご本人が時間を掛けて用意していると聞き、そのたびに気持ちをリセットするのは大変だったろうと思います」と述懐。しかし実際に行われた撮影を振り返り、「小さな居間で、スタッフもいられない場所で行われた撮影は濃密でした。その後、クランクアップ後の打ち上げにお越しいただき、そこで少し会話できたのが最後となってしまいました」と続いた。

さらにその手紙では「実はもう一作、りりィさんのために作品を用意していました」と明かされており、「それが実現しなかったのが心残りではありますが、思えば、僕の作品の中で永遠に生きているのです。なので、僕はりりィさんにお別れを言う理由がないのです。ですから、りりィさん、これからも一緒によろしくお願いします、という思いです」という言葉で締めくくられた。

りりィさんへの哀悼の思いもコメントした斎藤工

この日は、登壇者たちが、りりィさんへの哀悼の思いを次々と表明。『団地』で最優秀助演男優賞を獲得した斎藤工は「りりィさんはあこがれでした。ドラマの『昼顔』をはじめ、何度か共演しましたが、りりィさんにしか出せない色があり、唯一無二でした。そんなりりィさんと同じタイミングで受賞できたのは光栄でした。あらためてご冥福をお祈りいたします」とコメント。

りりぃさんとのエピソードを語った筒井真理子

さらに『淵に立つ』で主演女優賞を獲得した筒井真理子は、「以前から高崎は、いつまでも忘れたくない映画に光を当ててくれる映画祭だと思っていました。光栄です」と喜びのコメントを切り出すと、「もうひとつうれしかったことがあります」。続けて「最優秀助演女優賞をりりィさんがお取りになったと聞いて、一緒に会場に来られるんだなと。とてもうれしく思っていました」と語る筒井の瞳からは、みるみるうちに涙が。

さらに「わたし、本当にりりィさんのことが大好きで」と付け加えた筒井は、『淵に立つ』を上映していた劇場で、自分の5席程前でりりィさんが映画を観ていることに気付き、声をかけようかと思ったが、見失ってしまったというエピソードを紹介。その後、「『リップヴァンウィンクルの花嫁』、とてもステキでした。わたしもりりィさんみたいな役者になりたい」とメールを送ったところ、りりィさんからは「そんなに褒められたら宇宙の果てまで飛んでっちゃうな。恥ずかしいな」と返信があったという。しかしそこには「でも『淵に立つ』はまだ観ていないの。観たいけど、きっとドッペルゲンガーだね」と付け加えられていたそうで、「それから4週間後に訃報を聞きました」。

「とても元気なメールだったので、わたしはすっかり元気だと思っていて。だからそれを聞いてショックでした。でもあそこの劇場に座っていらしたのは絶対にりりィさんの分身だと今も信じています」という筒井は、「りりィさんと同じ、高崎映画祭で賞をいただけたこと本当に光栄に思っています。わたしもりりィさんみたいなステキな女優さんになれるよう精進してまいります」と決意を語った。

そんな豪華キャストが登壇したこの日の授賞式。最後は受賞者に高崎映画祭名物となる“だるま”が送られた。りりィさんのだるまは、宮川プロデューサーが代わりに受け取った。

◎「第31回高崎映画祭」受賞者・受賞作品

最優秀作品賞:『淵に立つ』(深田晃司監督)
最優秀監督賞:森義隆監督(『聖の青春』)
最優秀監督賞:中野量太監督(『湯を沸かすほどの熱い愛』)
新進監督グランプリ:小路紘史監督(『ケンとカズ』)
ホリゾント賞:片渕須直監督、のん(『この世界の片隅に』)
最優秀主演女優賞:筒井真理子(『淵に立つ』)
最優秀主演女優賞:宮沢りえ(『湯を沸かすほどの熱い愛』)
最優秀主演男優賞:三浦友和(『葛城事件』)
最優秀助演女優賞:りりィ(『リップヴァンウィンクルの花嫁』)
最優秀助演男優賞:斎藤工(『団地』)
最優秀新進女優賞:杉咲花(『湯を沸かすほどの熱い愛』)
最優秀新進男優賞:カトウシンスケ(『ケンとカズ』)
最優秀新進男優賞:毎熊克哉(『ケンとカズ』)
最優秀新人女優賞:伊東蒼(『湯を沸かすほどの熱い愛』)
最優秀新人男優賞:吉沢太陽(『海よりもまだ深く』)

【取材・文/壬生智裕】

2017年3月27日 配信

『リップヴァンウィンクルの花嫁』

3月30日(木)に放送

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