さぬき映画祭01

今年で遂に10周年!“うどん県”こと香川県出身の本広克行監督が3年前より映画祭ディレクターを務め、話題作や香川県ゆかりの作品を上映する第10回さぬき映画祭が、2月11日から21日の11日間開催された。初日はイオンシネマ高松東で開会式が開催され、オープニング作品として山田洋次監督が最新作『家族はつらいよ』(3月12日より全国公開)を引っさげ来場した。

山田監督は本広監督に「第10回さぬき映画祭、おめでとうございます。記念すべき第10回目に『家族はつらいよ』が選ばれた事を光栄に思います」と喜びを口にした。舞台挨拶では、84歳にしていまも精力的に監督作をコンスタントに連打している山田監督に、本広監督が「なぜそんなに次から次へと作品を作られているのでしょうか?」と斬り込んだ。

さぬき映画祭02

山田監督は「作りたいものがあり、それが上手くクランクインできたということでしょう。何といっても『寅さん』を48本も立て続けに作っているので、そのテンポに慣れちゃったということもあるのでしょうね」とユーモアたっぷりに答える。

『家族はつらいよ』は、『東京家族』(13)の橋爪功、吉行和子、西村雅彦、夏川結衣、中嶋朋子、林家正蔵、妻夫木聡、蒼井優の8人が続投して、また家族としての見事なアンサンブル演技を見せている。

山田監督は「『東京家族』でみんなが仲良くなり、独特のアンサンブルが生まれたので、もったいないから、もう一回できるんじゃないかなと思いました。角度を変えれば家族の問題で悩む人たちは滑稽でもあるなと。それで、8人をそのまま同じようなキャスティングで迎え、喜劇をもう一度作ってみようとしたのが『家族はつらいよ』なんです」。

さぬき映画祭03

『踊る大捜査線』シリーズの本広監督は、『サマータイムマシン・ブルース』(05)や『曲がれ!スプーン』(09)など、コメディの演出にも定評がある。本広監督は「僕もコメディ映画を頑張って作っていますが、笑いを届けることってあまり評価されないですよね。コメディは一番難しい。なぜこうも評価されないのかと監督に一度聞いてみたかったのですが……」と山田監督に問う。

山田監督は「昔から喜劇映画は二流、三流と見られがちだけど、僕が若い頃は、先輩に喜劇について『観客が笑わなきゃ、その映画は喜劇として落第だと結論が出るから、最も難しいんだぜ』と言われた言葉が印象に残っています。面白いと思って作ったからといって観客が笑うわけじゃないし、真面目に一生懸命作った場面が大爆笑になったり、予想外の場面で笑ってもらったりして、驚くんです。僕が『寅さん』を作りながらずいぶん体験したことですね。おかしい映画を作ろうと思っちゃいけないというか、やっぱり真面目に、人間をちゃんと表現すればいいんだと。だから一生懸命、人間を描くということなのではないかと思っています」。

さぬき映画祭04

この日は、当時『男はつらいよ』の劇中歌でバイオリンの演奏を10年間担当していた香川県文化功労者でコンサートマスターの福崎至佐子も登壇し、生演奏を披露。この香川県の粋な計らいに、山田洋次監督も拍手を送る。

本広監督が「映画祭らしくなってきましたね」とうれしそうに言うと、山田監督は、当時の音楽の作成の秘話についても語ってくれ、会場も大いに盛り上がった。

さぬき映画祭05

また、2月13日には、大林宣彦監督が、自身の渾身の監督作『野のなななのか』(14)の上映会に登壇し、本広監督と熱いトークを繰り広げた。

大林監督は「政治経済はナンバーワンを目指すから常に争いが起こる。しかし映画はオンリーワンを目指すもの。どうか若い映画人たちも映画の力を信じて頑張って欲しい」と、若手にエールを贈った。

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さぬき映画祭07

さらに、今や世界的な女優の一人である韓国出身の女優ペ・ドゥナがゲストとして来日。カンヌ国際映画祭「ある視点」部門に正式出品された主演作『私の少女』(14)上映後、彼女の主演作『空気人形』(09)を手掛けた是枝裕和監督をサプライズゲストに迎え、2人でトークショーを行った。

是枝監督の印象は?との質問に対し「これまでたくさんの素晴らしい監督とお仕事してきましたが、是枝監督が一番好きです」とのぺ・ドゥナの答えに、思わず是枝監督が照れ笑いを浮かべるという一幕もあり、二人の“相思相愛”ぶりが垣間見えるトークショーとなった。

<トークショーの詳細はコチラ

香川ならではの温かいムードのなか、映画祭ディレクター本広監督の熱意に吸い寄せられたかのように、本当に多くの錚々たる映画監督や俳優がゲストとして来場し、連日さまざまなイベントが行われた。後編ではさらなるイベントの模様をお伝えする!
【取材・文/山崎伸子】

2016年3月11日 配信