香川県出身の本広克行監督が3年前から映画祭ディレクターを務め、話題作や香川県ゆかりの作品を上映する第10回さぬき映画祭が2月11日から21日の11日間に渡り開催された。同映画祭は映画を観たり、ゲストの熱いトークを楽しんだりすることはもちろん、合間にうどんなどの香川名物を味わったりして、地元の人々と交流できる点でも人気が高い。

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今回さぬき映画祭ならでは企画として、2月18日にはアンドロイド演劇『さようなら』&映画『さようなら』と題した特別イベントも開催された。その内容は…演劇と映画をダブルで鑑賞した後、トークショーを行うという贅沢なもの。演劇版を手がけた演出家で劇作家の平田オリザ、映画版を手がけた深田晃司監督、さらにどちらのバージョンでも主演を務めた女優のブライアリー・ロング、本広監督の4人が登壇し、クロストークを行った。

深田晃司監督は「演劇といっしょに上映していただくのは今回が初めてで、大変貴重な機会をいただき、ありがとうございます!」と感激すると、平田も「良かったです。実現できて」と笑顔を見せた。

『さようなら』は、放射能に侵された近未来の日本で、避難できずに悲しい運命を迎える南アフリカ難民の女性と、彼女に寄り添うアンドロイドの姿を通し、生と死を見つめなおしていく物語。芸術×科学の融合の臨界点を示す衝撃作となっている。

平田の舞台に感銘を受けた深田監督が、映画化の企画書を送ったが、その段階で東日本大震災が起きたことで、物語の後半をひらめいたと言う。「映画の方も原発をどうしたああしたで日本が終わっちゃうという状況を書き加え、オリザさんにこういう内容で映画化したいけどどうですか?と提案しました」。

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平田は「実は、僕もその時、震災をテーマにと思って、後半の構想がすでにあったので、それを受けて、すぐに書いて渡したんです。著作権でいうと、先に書いたもの勝ちなので」と笑う。深田監督が「僕が電話をしてから、5日後くらいにオリザさんから後半の脚本が届いて。挑戦状かと思いました」とツッコミを入れると、平田は「そうじゃないと、僕がぱくったと思われるから。危ないところだった」と苦笑い。

本広監督が「実は、僕もこの原作を狙っていたんです。そしたら、『深田くんから企画書が来ているから』と聞いて、しぶしぶ僕は『幕が上がる』(15)です」とコメントし、笑いを取る。『幕が上がる』も、平田オリザの原作で、ももいろクローバーZで映画化し、好評を博した作品だからだ。深田監督は「それも素晴らしい映画でした」と本広監督を称えた。平田は「50年以上生きてきて、昨年、いきなり2本もいっぺんに映画化された。これが最後だと思う」と言うと、会場でどっと笑いが起きた。

さらに平田が「今の段階では、アンドロイドのスタントを人間がやっています。でも、CGが発達して、エキストラの人が失業してしまったように、俳優そっくりの人間が空を飛ぶとか、そういうことは将来的にあるかもしれない。そこだけ一瞬であれば、お客さんもわからないだろうし、保険もかけなくていい。最後はコストの問題になると思う」と発言。

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本広監督が「そうなると、困りますよね?」と、ブライアリー・ロングに振ると「いや、私もロボットなので」と、アンドロイド役ならではのおちゃめなコメントをし、会場を沸かせた。

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また、3年前から毎年映画祭にて毎年上映されている俊英・尾野慎太郎監督がさぬき映画祭の舞台裏に密着したドキュメンタリー「映画祭のつくり方 2016」の上映が今年も行われた。同作は本広監督が映画祭ディレクターに就任した2013年から継続的に撮り続けられ、毎年バージョンを更新している他に類をみないドキュメンタリー作品。上映後には本広監督、尾野監督ふたりに加え『ドラゴンヘッド』(03)の飯田譲治監督も加わってのクロストークも行われた。

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なお、今回上映された「映画祭のつくり方 2016」は、日本映画専門チャンネルで3月21日(月・休)あさ10時より、「映画祭のつくり方-さぬき映画祭の場合-」というタイトルで、先月閉幕したばかりの今年の映画祭の舞台裏の模様も加えた文字通り“最新バージョン”としてテレビ初放送される。本広監督と映画祭スタッフの3年間に渡る血と汗と涙が凝縮されたドキュメンタリーを是非ご覧頂きたい。

今年10周年を迎えたさぬき映画祭は、ショートムービーを含む上映本数が159本、来場したゲストが104人と、連日、大盛況だった。入場者数は、前年比45%増の1万2462人となり、10年目にして初めて動員数が1万人を突破したと、同映画祭実行委員会が発表した。ぜひ、来年は早めにチェックして、うどん県ならではの映画祭を堪能してほしい。
【取材・文/山崎伸子】

2016年3月18日 配信