くまもと復興映画祭2-1
妻夫木聡もゲストに登場

  2016年4月14日以降、熊本県を中心に継続して発生した「熊本地震」からおよそ1年。「復興の途上にある熊本を映画の力で元気にしたい」というテーマを掲げ、4月7日から9日にかけて熊本県各所で「くまもと復興映画祭 Powered by 菊池映画祭」が行われた。

  もともとこの「くまもと復興映画祭」は、行定勲監督がディレクターを務め、熊本県菊池市の市民有志によって開催されてきた「菊池映画祭」をベースに、熊本市、益城町がタッグを組んだ「オール熊本」で行われる映画祭となる。菊池市は温泉街で、桜の名所としても知られる風情あふれる土地柄。初日の夜は、熊本城から移動して、そんな菊池の温泉宿に宿泊させてもらえることとなった。こちらの温泉は日本の名湯百選に認定されている名湯で、源泉かけ流しのなめらかな湯が絶品。ポカポカな露天風呂で疲れを癒やし、格別なひとときを味わった。

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写真左:2日目の会場・菊池市文化会館/写真右:行定監督も驚くほど、大勢の女性客が来場

  そして一晩あけて2日目となる4月8日は、会場となる菊池市文化会館に向かった。朝9時半から上映されたのは、佐藤健主演の『世界から猫が消えたなら』。こちらは、主演の佐藤が「ぜひ熊本の皆さまにも観ていただきたい」と熱望した作品なのだとか。というのも、昨年の熊本地震は映画業界にも深刻な被害をもたらしており、熊本県内にある7つの映画館のうち、半数以上の映画館が長期的な休業を余儀なくされたからだ。昨年の5月14日に初日を迎えた『世界から猫が消えたなら』も熊本県内で上映することができなかったため、この映画祭でようやく熊本での上映がかなったというわけだ。

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熊本への熱い思いを語った佐藤健

  会場は大勢の女性客で超満員。行定監督が「こんなに埋まっている会場を初めて見た」と驚くほどだった。ステージに立った佐藤は、「熊本で震災があった時に、東京に住んでいる仲間と僕たちにできることはないのかと話していたんです。その時にいろいろと話を聞いていると、残念なことに観光客の数が減っているのが問題なんだと。僕らはよかれと思って、行かない方がいいのではと思っていたんですが、むしろ大変な時こそ来てほしいといわれたんです」とコメント。まさに自分も、多くの人からそんな思いを耳にしていたから、思わず彼の言葉にうなづいてしまった。そんな思いを胸に、彼は「るろうにほん 熊本へ」というガイドブック本を出版することにしたのだとか。「この本を手に取って、ちょっとでも熊本に行ってみようかなと思ってもらえたらうれしい」と呼びかけた佐藤に、会場からは万雷の拍手が送られた。

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写真左:熊本屈指の味自慢の屋台/写真右:益城町 復幸 馬すじカレー

  朝の上映が終わるともうお昼だ。会場外には、熊本屈指の味自慢の屋台が集合。この日はあいにくの雨模様だったが、せっかくなのでここで食べておきたい。会場をぶらぶらと歩いていると「益城町 復幸 馬すじカレー」が目についたので注文。馬すじは、非常に柔らかく、非常においしい。さらにジャージー牛乳を使用した「益城プリン」も購入。濃厚な味わいが非常に美味だった。

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妻夫木聡は熊本との縁についても語った

  食事の後はまた会場に戻り、妻夫木聡の『ぼくたちの家族』『ジョゼと虎と魚たち』の上映会に。彼自身は福岡県の出身だが、彼の父が熊本空港で働いていた、という縁もあり、熊本には親近感を抱いていたのだとか。さらに熊本にはゴルフにもよく行っているそうだ。なお、この日、久しぶりに『ジョゼと虎と魚たち』を観たそうで、「久しぶりに観たけどいい映画ですね」としみじみ語る姿が印象的だった。

  そして夜には、菊池市御所通り能場で「きくちの夜会」が実施された。ホームページに記載されている解説文によると、「征西将軍・懐良親王が下向の際に御手植えされたともいわれている樹齢600年の将軍木、そしてその木を親王に見立て建立された菊池松囃子能場。夜会の会場となる御所通りはまさに菊池の文化発祥の地。伝統のある能場を舞台に繰り広げられる唄や踊り、そしてゲストのトークで菊池の夜を盛り上げます」とのことだ。

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写真左:野外スクリーンも設置/写真右:津軽三味線と舞踏のコラボパフォーマンス

  会場には野外スクリーンが設置されており、菊池ロケで制作された外山文治監督の短編映画『春なれや』が上映されていた。吉行和子主演で、若手注目株の村上虹郎も出演。「ソメイヨシノは60年たつと咲くことができない」といううわさの真相を確かめるべく、山奥の老人ホームから抜け出した女性・小春の希望を描き出した物語。スクリーンのまわりには大勢の観客が集合していた。前日の熊本城二の丸広場同様、この日も子どもたちの姿がそこかしこで見られた。野外上映が面白いのか、光るスクリーンのまわりでキャッキャはしゃいでいる子どもたち。なんだか気持ちが明るくなる。

  そして上映が終わると、今度は能場で津軽三味線奏者の高崎裕士、舞踏団の花童によるコラボパフォーマンスを観賞。幻想的な雰囲気が非常に良い。そしてその後は、高良健吾、妻夫木聡らが再び能場に登場。観客はみんなニコニコ笑顔でうれしそうな様子。スターというのは、みんなに笑顔をもたらすものなのだなと改めて思った。また、御所通り沿いは歩行者天国になっており、熊本屈指の味自慢の屋台がズラリ。ほかのお客で、ラーメンと高菜めしを食べている人がいたのだけれど、その人の食べている様子があまりにもおいしそうだったので、自分も注文。熊本ラーメンを食し、再び元気が出てきた。

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「真夜中の映画祭」にも豪華なゲストが登場

  しかし映画祭はまだまだ終わらない。近くにあるSpaceというイベントスペースに会場を変えて、菊池映画祭恒例となる「真夜中の映画祭」と題したトークショーを実施。そこではまずロマンポルノの名作『天使のはらわた 赤い淫画』を上映。その後、行定勲監督、足立紳監督、本広克行監督、女優の芦那すみれ、岡村いずみ、映画評論家のミルクマン斉藤らが参加するトークショーが行われた。ここでは書けないような赤裸々トークが次々と登場。適度な猥雑さを楽しみながら、菊池の夜は更けていった…。

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写真左:最終日の会場は熊本県立劇場/写真右:ここにも妻夫木聡らがゲスト出演

  そして翌日は熊本市に移動し、『春の雪』『東京物語』『14の夜』『うつくしいひと サバ?』を上映。ゲストも妻夫木聡、高良健吾、そしてサプライズゲストとして永山絢斗まで来場。観客からも「この映画祭をやってくれてありがとうございます」という声が次々と飛び出しており、観客の満足げな顔が印象的だった。

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自ら映画祭の企画も考えたという高良健吾
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シークレットゲストとして永山絢斗が登場!

  そしてすべてのプログラムが終わり、大西一史熊本市長があいさつに立った。「3日間、多くの皆さんの力で希望をいただくすばらしい映画祭ができました」と切り出した大西市長は「ぜひ来年も映画祭を続けて、みんなで熊本の未来に向けて進みたいと思いますが、いかがでしょうか?」と会場に呼びかけ、万雷の拍手を浴びていた。その拍手に笑顔を見せた大西市長は「わたしたちは負けません! 『うつくしいひと』が暮らす『うつくしいまち』熊本をもっとよくしていきたいと思います。来年、またお会いしましょう!」と来年の映画祭の開催を宣言。今後、この映画祭がどのように進化していくのか、本当に楽しみだ。

【取材・文/壬生智裕】

「くまもと復興映画祭」公式ホームページはコチラ

2017年4月17日配信