2015年11月15日、両国国技館でのラストマッチで約40年間のプロレス人生に終止符を打った天龍源一郎。その1年間に及ぶ引退ロードを追ったドキュメンタリー映画『LIVE FOR TODAY―天龍源一郎―』が2月4日(土)から公開される。映画の公開を前に、引退ロードのことやプロレスへの思いを聞いた。

天龍源一郎

2回観たんですが
2回とも泣いてしまった

――完成した映画はご覧になりましたか。

出来たまんまのものと、染谷将太さんのナレーションの入ったものと、2回観たんですが、いや~不覚にも2回とも泣いてしまいました(苦笑)。代表(娘の嶋田紋奈さん)や女房が僕の後ろで心配そうな表情を見せていたり、それは映画を観て初めて知ったところですから、感傷的になりましたね。

――試合前、リングシューズに紐を通して結ぶシーンが印象的でした。天龍さんはこの作業を約40年間繰り返したのだな、と。

あそこが腹を括る瞬間なんですよ。会場に入るとマッチメイクを確認して、紐を結びながら「なんでこんなクソ田舎で、若いあんちゃんとやらなきゃいけなんだ!」なんて自問自答しているんです。でも紐を結び終えたら「やるしかねえか!」と。

――その大事な儀式をカメラで撮られる、ということに抵抗はありませんでしたか?

最初はね(苦笑)。記者もカメラマンも見知った顔ばかりで、その中を監督が入ってきてずっとカメラを回してるから「何やってんだよ、このおっさんは!」とイライラしましたよ。でも代表に「ドキュメンタリーを撮ってます」と言われて、受け入れる僕がいて。手術(脊柱管狭窄症)をしたこともあって「もう全部撮ってくれ!」と。

天龍源一郎

――天龍さんとカメラの距離がどんどん近くなるのが、映画を通して伝わってきました。

僕からすれば「何十時間も追っかけて、どうまとめるんだろう?」と思ってましたけど、上手くまとめて貰ったと思います。

(恩師の)ジャイアント馬場さんも(ライバルの)ジャンボ鶴田選手もかなわなかった「引退試合の映画を残せた」というので鼻高々ですよ(笑)。あの世に行ったら「この野郎!」って馬場さんに怒られるだろうから、ゴマ擦るために風呂で背中を流さないといけないかな。八畳分ぐらいある広い背中を(笑)。

天龍源一郎

次の世代にバトンを
渡すことは出来たかな

――引退試合の相手は、若きプロレス界のエース、オカダ・カズチカ選手を指名しました。

「なんでオカダなんだ」という人もいましたよ。でも、僕は「(アントニオ)猪木さんに勝った、馬場さんに勝った」ということがあって、今まで目を向けてくれなかった人が目を向けてくれるようになった。

だから、その僕が、次の世代のオカダに負けて、みんなの注目を集めるなら本望ですよね。プロレスで飯を食って、家族を養って稼いできたのなら、食って稼いできた分を次の世代にバトンを渡す義務があるわけだから。それは出来たかなと思うし。

――当時65歳の天龍さんと28歳のオカダ選手がシングルマッチで戦い、壮絶な試合で年間最高試合を獲得しました。実際に対戦して、オカダ選手にどんな印象を持ちましたか?

思ってた以上に躍動感があって「大先輩に向かって、よくあんだけ飛び蹴りをかましやがったな」と(苦笑)。でも「よう受けたな、天龍」という自負もありますよ。だから、僕は最後がオカダでよかったと思ってますし、オカダにはもっともっと粋がって、もっとプロレスラーの凄さを見せてほしいと思いますよ。

天龍源一郎

――映画の中で、ミッキー・ローク主演の『レスラー』に言及するシーンがありました。

公開された頃(’09年)は僕も現役バリバリで「レスラーを揶揄した映画じゃないか」と腹が立ちましたよ。でも、自分も60歳を過ぎて、医師に「これ以上やったら、体がボロボロになってどうなるか分かりませんよ」と言われましたけど、リングが自分の居場所なんですよ。そう思った時に『レスラー』に同調する部分があって。みんな自分の居場所を見つけるために世の中をさまよっていて、安住の地を見つけたらそこに定住する。

ただ、映画でミッキー・ロークはダイビングエルボーでフェイドアウトしていくんだけど、僕は女房に「最後、自分の足で歩いて帰ってくれてありがとう」と言われて、その言葉で「ああ、まっとうできてよかったな」と思いましたよ。

天龍源一郎

てんりゅう・げんいちろう●’50年2月2日生まれ、福井県出身。’63年12月、二所ノ関部屋に入門し、相撲の世界に入る。’73年から幕内に16場所在位。’76年10月、全日本プロレスへ入団。’80年代に天龍革命を起こし、三冠ヘビー級王者になるなど数々のタイトルを獲得、黄金時代を築く。日本人プロレスラーで唯一、プロレス界の二大巨頭であるジャイアント馬場とアントニオ猪木からピンフォール勝ちを収め、“ミスター・プロレス”として熱狂的な支持を集める。’15年11月に現役引退。

  • ●撮影:土井一秀
  • ●取材・文:茂田浩司

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映画『LIVE FOR TODAY ‐天龍源一郎‐』

2017年2月4日(土)公開

映画『LIVE FOR TODAY ‐天龍源一郎‐』

“ミスター・プロレス”天龍源一郎の’15年2月の引退発表から、11月の引退試合までの激動の1年間を追うドキュメンタリー。プロレスラーとしての姿だけでなく、普段ファンの前では決して見せることのなかった家族との絆も克明に描く。ナレーションは大のプロレスファンで、天龍の引退試合も観戦した俳優の染谷将太。

映画『LIVE FOR TODAY ‐天龍源一郎‐』公式サイト

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2017年2月1日 配信